インタビュー02

インタビュー時年齢:50歳(2016年2月22日)

プロフィール

幼少期から、顎が小さくて歯並びが悪く、磨きにくかったので、虫歯になることが多かった。また、歯列の内側に外れて生えている歯で舌を噛んでしまっては口内炎になることを繰り返していたので、大学生の時に上下4本の歯を抜いた。

28歳の時、会社帰りの地下鉄の駅で、ハイヒールが階段の端にひっかかって、階段の一番下まで転落し、前歯1本が欠け、その歯と重なっていた2本にひびが入ってしまった。その1ヵ月後に結納が控えていたため、知り合いの歯科に駆け込んで、結納に間に合うように治してもらった。なるべく自然に見える素材の差し歯は保険適用がなかったが、通勤途中だったので、労災保険が下りて経済的には助かった。

治療が終わった時に人工歯の付け根、つまり歯茎と差し歯の間に黒っぽい金属部分が見えていて、主治医はいずれ歯肉が下がってきて見えなくなるといったが、10年以上経っても歯肉は下がらずその金属部分が見えなくなることはなかった。結婚して子どもができてから、よその子どもに「おばちゃんの歯は何で黒いの」といわれたこともあり、思い切り歯茎が見えるようなビッグスマイルはできず、写真を撮るときも中途半端な笑顔になりがちだったように思う。数年前に新しく差し歯を作り替えたとき、その点が気になるので、見えないようにしてほしいと依頼し、歯茎と差し歯の間に金属部分の継ぎ目がほとんど見えないようにしてもらえた。

差し歯にしてからは、前歯でリンゴをかじったり、堅焼きせんべいをばりんと噛んだりしないように言われているが、そのことで特に不便は感じていない。ただ、転落事故の少し前に、別の病気のために上あごの歯茎の上部を切開する手術を受けていたことが関係しているのかもしれないが、前歯でものを噛んだ時の違和感は20年以上経った今でも残っている。前歯を使った時だけ歯の奥の神経に、他の歯とは違う、痛みとも違う感触がある。

差し歯は10年から15年ぐらいで作り替えたほうがいい、ということは当初知らなかったが、たまたま子どもの歯列矯正を担当した医師からそのことを聞いて、作り替えた。今では1年に1回は、かかりつけ医に歯と歯茎の状態を診てもらっている。差し歯だと歯と歯の間に歯肉が入り込まず歯垢がつきやすいので、歯磨きの際には歯間ブラシを使うようにしている。

できる限り自分の歯を残して、美味しく食事をしながら健康に生きていきたいと思っているが、歯科では医師によって治療方針がかなりばらばらで、患者としては出会いがしらの相性で決まってしまうのはいかがなものかと思う。がん治療では標準治療が確立されているが、本当に将来的な健康を考えた時にどういう治療がいいのかということを専門家の間で話し合って標準化してもらえると、安心してどこの歯医者さんにもかかれるようになるのではないかと考えている。