インタビュー07

インタビュー時年齢:78歳(2016年12月2日)

プロフィール

夫と床屋を営んでいた40代初め、舌にざらざらした白いものができ、近所の医院で診てもらったが「口内炎だ」といわれた。1年後には4センチ四方の病変になったので、地元の病院を受診したところ、白板症という前がん状態のものでほっておくとがんになる可能性があると説明された。「急いで取らなくてもいいが、毎月見せに来るように。来られないなら取ってしまおう」と言われた。

がん専門病院に移って数か月様子を見ていたが、「そろそろ取った方がいい」といわれたので、入院して手術をした。取ったあと「がんではなかったよ」と言われた。手術直後は舌がたらこのように大きく腫れて、しゃべれなくなってしまい動揺したが、看護師さんに「屋上に上がって大きな声で歌ったり、朗読したりしなさい」と言われた。退院後もこのままじゃだめだと思って、民謡を習い始めた。舌を手術したことで「さしすせそ」がはっきり出せなくなってしまったが、熱心に稽古をするうちに全国大会に出場して賞を取るまでになった。

術後5~6年して、また白板症が出てきたが、その時は外来で治療してもらった。このとき、今度しゃべれなくなったら困ると思い、社交ダンスを習い始めた。その後も毎月検診に通っていたが、数年前に「もう来なくても大丈夫」と言われた。最初にかかった医師から「検査は一生受けないとダメだよ」と言われていたので、これからも通院を続けたいと言うと、「それなら1年にいっぺんにしよう」と言われた。本当は嫌だったが、通院をやめて、2015年に1年ぶりで検査を受けたところ、今度は頬の粘膜にがんが見つかった。全身麻酔の手術となったが、もっと早く行っていれば手術も簡単に済んだのではないかと今も後悔している。

手術のあとは口を大きく開けられなくなり、ご飯が食べられなくて困った。重湯から食べ始めたが、食事に1時間以上かかった。退院してから歯科医師に勧められて、「洗濯ばさみのお化け」のような器具を使って口を開ける訓練をして、ようやくものが食べられるようになったが、今でも大きなお鮨をパクっと一口で食べることはできない。また、お天気が悪いときや熱いものを食べると傷口に痛みを感じることがあり、料理のときに味見するのも苦手になった。

今もがん専門病院には毎月検診に通っていて、同じ病院で歯科検診も受けている。1年前に夫が亡くなって一人暮らしになった。夫の闘病中は民謡や社交ダンスを休んでいたが、昔の仲間が誘ってくれるので復帰しようと考えている。病気にならなければ民謡も社交ダンスもやってなかったと思うので、これからもくよくよしないで、前向きに生きていこうと思う。