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イントロダクション
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日本では 6年ごとに歯科疾患実態調査が行われ、日本の歯科疾患の有病状況が示されている。5カ国の歯科疾患実態調査の結果と日本の歯科疾患実態調査の調査結果との比較を試みた。実際には対象年齢、評価方法が異なり、単純な比較は困難であったが、諸外国の指標に相当する部分を日本の歯科疾患実態調査から抜粋し比較を行った。
今回比較を行った資料は歯科疾患実態調査(日本、1987年、1993年、1999年)、成人歯科疾患実態調査(アメリカ、1985年-1986年)、第二次全国口腔健康流行病学抽様調査(中国、1995年5月〜1996年1月に調査)、韓国国民口腔健康実態調査(2000年)、第4回タイ王国 歯科疾患実態調査報告(1994)、スリランカ(1994-95)である。日本の歯科疾患実態調査結果は諸外国の調査年に相当する部分を使用した。
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全体の比較
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今回の調査でアメリカ、タイ、韓国、中国、スリランカで共通して比較可能であった項目は無歯顎者の割合と齲蝕の罹患状況であった。
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無歯顎者の割合
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65歳から74歳の無歯顎者の割合の結果を図1に示した。中国が最も少なく11.87%,スリランカが最も高く40.3%であり、日本はアメリカよりやや良好な状態であった。(図1)
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図2,3に男女別の集計を示す。女性では全体の傾向と大きく差はないが、男性では日本の無歯顎者の割合が少なかった。タイの調査では、対象年齢が60-69歳で集計されていたため、図4に日本との比較を示した。タイと日本では大きな差は認められなかった。また韓国の調査からは無歯顎者の割合は算出できなかった。 |

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齲蝕罹患率
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図5-8にそれぞれ65歳から74歳の未処置歯数、喪失歯数、処置歯数、DMF歯数を示した。また、無歯顎者の割合と同様にタイの調査は対象年齢が60-69歳で集計されていたため図9に日本とタイの比較を示した。
未処置歯数に関しては日本は韓国とほぼ同程度であり、中国、スリランカより低く、アメリカより多い状況であった。喪失歯数に関して日本は、アメリカ、韓国より多く、タイとほぼ同程度でスリランカより少なかった。中国のデータから喪失歯数は算出できなかった。処置歯数に関しては、日本はアメリカより少なかったが、中国、韓国、タイ、スリランカと比較して極端に多かった。 |




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日本とアメリカの比較 |
1986年のアメリカの調査結果と日本の1987年の歯科疾患実態調査の結果を比較した。無歯顎者の割合では、75-79歳、80歳以上のいずれもアメリカより日本の方が無歯顎者の割合が多い(図10)。
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有歯顎者のみ算出した一人平均現在歯数は、いずれの年齢でもアメリカの方が多く、年齢の増加とともにその差は大きくなる(図11)。 |
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一人平均DFTでは、全体的に日本の方が高いが大きな差は認められない(図12)。
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DFT中のDT、FTの割合ではアメリカの方が処置歯(FT)の割合が多く、日本では未処置歯(DT)の割合が多かった(図13,14)。
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日本と中国の比較 |
1995年5月から1996年1月に行われた第二次全国口腔健康流行病学抽様調査の対象年齢65歳から74歳の結果を日本の1993年の歯科疾患実態調査の結果と比較した。喪失歯数を日本と中国を比較した場合、中国の方が低い値であるが、日本は3歯以上喪失している者の割合が高かった(図15)。
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中国では65歳から74歳で20歯以上ある者の割合が57.68%もおり非常に高い値であった(図16)。
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一人平均現在歯数では、中国では無歯顎者を含む場合でも18本あり非常に高い値である
(図17)。
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日本と韓国の比較 |
2000年に行われた韓国国民口腔健康実態調査と日本の1999年の歯科疾患実態調査の結果を調査対象が55歳以上の者のデータを用いて比較した。齲蝕罹患率は韓国、日本ともに90%を超え高い値であるが、韓国の方が各年代ともにやや低い値であった(図18)。年代別に未処置歯数、喪失歯数、処置歯数を比較した結果を図19-21に示す。未処置歯数は日本では年代の増加とともに減少するに対し、韓国では増加する傾向がみられた。喪失歯数は韓国と比較して日本の方が高い値を示し、年代の増加とともにその差が大きくなる傾向がみられた。処置歯数に関しては日本は韓国と比較して非常に高い値であった。
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日本とタイの比較 |
1994年に実施された第4回タイ王国 歯科疾患実態調査報告の対象年齢60歳から74歳のデータを日本の1993年の歯科疾患実態調査と比較した。タイと日本では無歯顎者の割合、平均喪失歯数では大きな差はなかったが、60歳から74歳で20歯以上自分の歯を有するものの割合はタイで47.20%であるのに対し、日本では37.32%と約10%の差が見られた(図22)。 |
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日本とスリランカの比較 |
1994-95年に実施されたスリランカの調査結果を、日本の1993年の歯科疾患実態調査の値と比較した。対象者の年齢は65歳〜74歳である。一人平均現在歯数は大きな差はみられないが(図23)、無歯顎者の割合がスリランカでは高い値であった(図24)。
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義歯装着者を比較した結果、スリランカでは義歯装着者が非常に低い値であった(図25)。
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また一人平均喪失歯数の比較では、日本の方が低い値であり(図26),喪失歯の割合ではスリランカの方が多数歯を欠損している傾向がみられた(図27)。
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結論 |
今回日本のデータを中心に得られた資料と比較したが、高齢者の歯科保健状況を示す指標や基準、集計方法は各国ごとに異なり、単純に国際比較することは困難であった。また、幾つかの指標を定めて、比較検討する必要があり、複数の有効な比較方法を確立し普及する必要があることが重要であることが明らかとなった。
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