8020  No.13  2014-1

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8020推進財団指定研究事業報告

歯と全身の健康の関連を検討するため、都道府県歯科医師会会員自らが参加する追跡調査を実施し

ています。今回は口腔に関連した生活の質(QOL)と死亡リスクとの関係を検討しました。喪失歯数
などを考慮しても口腔関連QOLが低いほど死亡リスクは高く、口腔関連QOL向上が長寿につながる
可能性や、口腔関連QOLが重大な全身疾患の口腔への影響を早期に反映する可能性が考えられました。

1. 歯の健康と全身の健康

    -歯科医師コホート研究-

歯の健康が全身の健康につながるとする「8020

運動」のテーゼを証明するためには、口腔状態が良
い者では、実際に寿命が長く、重大疾病への罹患が
少ないかどうかを追跡調査(コホート研究)により
検討することが望まれます。しかも死亡や全身疾患
の発生などは多くはないため、1万人単位の集団を
数年から十数年の長期にわたって追跡することが必

要です。

しかし地域住民を対象とした場合、大規模なコホー

ト研究には、歯科検診や追跡調査に膨大な費用と労
力が必要になります。そこで私たちは、調査票(ア
ンケート)によってもかなり正確な口腔状態のデー
タが得られ、かつ歯科医師会を通じた追跡調査が可
能な歯科医師を対象に追跡調査を実施してきまし

1〜3)

。この研究は、口腔保健の重要性についての

情報を歯科医師自らが発信する機会になり、「8020
運動」の推進にも有用と考えています

4)

本研究は都道府県歯科医師会のご協力の下、歯科

医師会員を対象に実施しています。調査開始時点の
基礎情報の収集は「歯科医師健康白書」調査

5)

として、

アンケートにより行いました。収集した情報は、年齢、
既往歴・家族歴、口腔状態、生活習慣、心理要因な
どで、2001年2月から2006年7月までに、全国
で21,272名の先生にご回答いただきました。

研究参加者の追跡調査には、書面による同意を得

 名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学 

若井 建志

(執筆代表者)

 

内藤真理子

 京都大学環境安全保健機構 健康科学センター 

川村  孝

 福岡歯科大学 高齢者歯科 

内藤  徹

愛知県歯科医師会 

小島 正彰

愛知学院大学歯学部 口腔衛生学 

中垣 晴男

社会保険診療報酬支払基金愛知支部 医療顧問 

梅村 長生

福和会横田塾 

横田  誠

鶴見大学歯学部 探索歯学 

花田 信弘

*わかい・けんじ
名古屋大学大学院医学系研究科予防医学教授、医師、博士

(医学)。1990年名古屋大学医学部卒業、94年名古屋大

学大学院医学研究科修了、同助手。03年愛知県がんセン
ター研究所主任研究員、06年名古屋大学大学院医学系研
究科准教授、14年1月より現職。1965年11月生まれ、
岐阜県岐阜市出身。主研究テーマ:歯と全身の健康との関
連、栄養疫学、がんの疫学

PROFILE

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