8020  No.13  2014-1

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座談会

KEEP  20TEETH  TILL  YOUR  80

●武見 敬三 氏

(たけみ・けいぞう)

1951年11月生まれ。参議院議員、元厚生労
働副大臣。1951年元世界医師会会長・日本
医師会会長 武見太郎氏の三男として生まれる。
74 年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。87年
テレビ朝日の「モーニングショー」のメインキャ
スターとして、総合司会を務める。95年東海
大学教授となり、日本医師連盟の推薦のもと参
議院議員初当選。01年参議院二期目再選。議
員期間中は外務政務次官から、厚生労働副大臣
まで数多くの役職を担ってきた。07年日本医
師会総合政策研究機構(日医総研)特別研究員
に就任、および、ハーバード大学公衆衛生大学
院および日米関係プログラム客員研究員に就任。
12年参議院3期目繰上げ当選、13年7月参議
院東京選挙区4期目再選

も実は大きなインパクトを持つこと
が、われわれが調べてみたらわかっ
たわけです。

これは歯科治療についても、おそ

らく同じことが言えるだろうと思い
ます。ただ単に放っておいて歯が残っ
たというだけではなくて、さまざま
な地域医療の中で、歯科治療サービ
スの提供が皆保険制度でかなり行き
わたって、その結果としてう蝕にし
ろ歯周病にしろ、早い段階で治療を
受けられるようになったことが、お
そらく統計学的に取ったら歯の数を
残す効果のうえで、インパクトとし
てずっと大きな効果を持ったのでは
ないかと思います。

そういうデータが、これからもっ

ときちんとできてくると、まさにベ
ストミックスが非常にわかりやすい
かたちでできてくると思います。そ
ういう点で神原先生のベストミック
スというのは、歯科治療だけに当て
はまるのではなくて、あらゆる医療
についてこの発想が当てはまるとい
うことを、この研究会で一緒に議論
させていただく中で、私は非常に深
く認識するようになりました。

深井 皆保険制度は日本で50年

以上経過しましたが、イギリスには
ナショナルヘルスサービスという、
似ているけれども少し違うシステム
があって、「ゆりかごから墓場まで」
という保健サービス、医療サービス
が使えます。このような国もありま
すが、世界全体で見ると、いまはア
メリカでも困難な局面があるように、
保険制度自体を全国民にシステムと
して使うというのは、途上国も含め
てなかなか難しいと思います。

その一方で、ポストMDGs

(Millennium Development 

Goals:ミレニアム開発目標/国連
や各国諸機関などが、開発途上国
の貧困問題の解決のために掲げた
2015年までの目標)の議論でユニ

バーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
をどうするかというときに、これは

「医療だけではなくて、自分が持てる

お金、自分が払えるお金で、だれで
も保健サービスにアクセスできる。
医療も受けられる」と考えていいの
でしょうか。

●日本の保健医療システム

と社会の安定化

武見 医療保険制度の整備と保健

医療の提供体制の整備が伴って、初
めてユニバーサル・ヘルス・カバレッ
ジができますが、あらゆる意味でプ
リペイメントシステムということで、

「保険料あるいは税金で、事前に自ら

支払ったお金が基本になって、こう
した保険医療制度が維持されてサー
ビスが適用されていく」というかた
ちが整っている国という点では、日
本は1961年前後にだいたい整えら
れて、世界の中でも相当早い時点で
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ
を実現できた国になっています。

ヨーロッパの中でもイギリス、フ

ランス、ドイツは、戦後まもない時
期に、同じようにこうしたかたちを
整えてきましたが、イギリスのやり
方が違うのは全部税金でやったとこ
ろです。しかも登録医制度という、
プライマリーヘルスケアを非常に重
視したかたちで地域医療の体系を整
えて、税金で面倒を見たので患者負
担がないんですね。驚くべきことに
外国人も患者負担をしないで済むと
いうところがありますが、そういう
制度をつくったわけです。

日本のように保険料を財源として

やるのと、イギリスのように税金を
財源としてやるのは非常に違う点で
すが、いずれにせよ日本は保険料を
財源とするかたちで、きわめて効果
的にこういう制度をつくり上げてい
ます。しかも高度経済成長が始まる

前のきわめていい時期に実現したの
で、生活水準の向上と同時に、その
制度を通じて保険医療のサービスが
浸透していくことが可能となって、
生活の改善と健康の確保がパラレル
に進んでいくという理想形をつくる
ことができたんですね。

そのために61年からわずか10年

間で、平均寿命が欧米と同じところ
まで延びてきて、それをさらに追い
越して1位にまでなってしまうわけ
です。そういう意味では、その時点
において日本の中で、ある種のベス
トミックスができていたのだろうと
いう感じがします。

ただ、これをもう1回きちんと歴

史的に検証して、データをそろえて
分析する必要性があるだろうし、そ
の中で歯科治療がどういう役割を果
たしたのかを、もう一度きちんと検
証してみると、おもしろい結果が出
てくるだろうと思います。

神原 武見先生は、国会で「富の