8020  No.13  2014-1

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トピックス

ん患者さんに非常に多い感染症の一つです。カンジ
ダの感染は口腔内清掃だけではなかなか改善せず、
抗真菌薬の適切な使用が必要となるため、特に注意
が必要です(図3)。

お口の痛みで食べられない、飲めない状態が続い

てしまうと、体力を落とし全身の衰弱は進んでしま
います。吐き気や倦怠感などで、お口の清掃が難し
くなり口内が不衛生になる上、免疫抑制状態が重な
り、さらに体力が低下する、こうした悪条件が重な
ると、口腔の感染症は局所に留まらず、敗血症といっ
たショックを起こすような全身の感染症に広がり、
時には死亡するといった最悪の結果を招くことすら
あります。  

このような抗がん剤治療中の口腔合併症は、まだ

今の医療では残念ながら発症をゼロにするような画
期的な治療法がありません。しかし、発症の頻度を
下げ、少しでも症状を和らげ、一日でも早く改善す
るためには、お口の中を清潔で整った環境にしてお
くといった、いわゆる「口腔のケア」が有効である
ことがさまざまな研究で報告されています。現在、
多くのガイドラインや系統的レビューにより「がん
治療の開始前、できれば2週間前までには歯科を受
診しておくこと」「がん治療中も継続して口腔内を清
潔で良好な環境に維持するよう努めること」が推奨
されています。

2)放射線治療中の患者さんに生じる口腔内合併症

放射線治療は局所療法なので、基本的に放射線が

あたった場所にだけ副作用が現れます。ですので、

お口のトラブルが起きるのは、お口の周辺(頭頸部)
に放射線があたった場合だけなのですが、その発症
の割合は100%であり、また抗がん剤治療の場合と
比べ、そのトラブルは重篤で遷延する傾向がありま
す。

放射線療法による口腔のトラブルは、治療期間中

から治療終了後数か月に発生する急性障害と、治療
終了後数か月以降に発生する晩期障害の、大きく二
つに分けられます(表2)。

急性障害は発症を避けられないのですが、基本的

には治療が終わると元に戻る副作用です。しかし症
状がひどいと治療を続けることができなくなってし
まうこともあります。放射線治療は途中で止めてし
まったりお休みをしたりすると、治療の効果が減弱
し治療成績が低下することが知られています。その
ため早期から症状緩和に努め、できるかぎり治療を
休まず最後までやり遂げていただくようサポートす
る必要があります。

放射線による口腔の急性障害の最も重大なものは

口腔粘膜炎です。治療が進むと口腔粘膜は徐々に発
赤し、腫れぼったくなり、ひりひりとした痛みを感
じるようになります。重症化すると潰瘍を形成した
り、感染したりして症状を悪化させ、治癒が遅延し
ます。粘膜炎の重症度は、放射線の照射量と比例す
ると言われています。放射線性口腔粘膜炎は、頭頚
部の放射線治療を最後までやり遂げることを邪魔す
る、大きな合併症です。口腔のケアによって症状を
緩和し、二次感染のリスクを抑えます。

図3 抗がん剤治療中の口腔内感染症

免疫が落ちた時期に、口腔内にカンジダ(カビの一種)

の感染が出現。ヒリヒリと痛み食事を妨げます。

表2 頭頸部領域への放射線治療による口腔合併症

発症の時期により、急性障害と晩期障害があります。

頭頸部放射線治療に伴う有害事象

ほとんどが照射部位に限局して起こる

急性障害

(治療期間中〜治療終了後数か月に発症)

・放射線性口腔粘膜炎
・放射線性口腔乾燥症
・口腔内感染症
・味覚異常

晩期障害

(治療終了後数か月以降に発症)

・放射線性骨髄炎、放射線性頸骨壊死
・瘢痕形成、開口障害、軟組織壊死
・放射線性う蝕