8020 No.13 2014-1
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トピックス
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晩期障害は一度起こってしまうと治らなかったり、
あるいは治療に難渋するものが多く、そのため極力
障害を起こさないこと、予防や早期発見、即時治療
が重要となります。晩期障害の発症リスクは、治療
後何年経過しても残っている半永久的なリスクと言
われています。がん治療を乗り越えた後も、晩期障
害を予防する口腔管理を行うことがとても大切なの
です。
放射線性の口腔乾燥は、放射線による唾液を作る
組織(唾液腺)がダメージを受けることで生じ、こ
れにより唾液は減少し、粘稠になります。この影響
は年単位で長く続き、時には回復しない場合もあり
ます(特に耳下腺に照射が多く当たった場合、乾燥
は非常に重度になります)。口内が乾燥すると、汚れ
がこびりつき口腔内の清掃を困難にし、口腔内細菌
が増加しやすくなるために感染を起こしやすくなり、
非常にむし歯ができやすくなります(このう蝕を総
じて放射線性う蝕と言います:図4)。また口腔粘膜
は萎縮して、痛みが出たり、義歯が使いづらくなっ
たりします。味も感じづらくなります。まさに口腔
乾燥は、あらゆるお口のトラブルの原因になります。
そして最も怖いのが、放射線性骨壊死です。放射
線があたった骨はかなりのダメージを受けており、
ちょっとしたことがきっかけで感染し、腐骨形成(あ
ごの骨が腐る)などが起こることがあります。最も
多い発症のきっかけは「抜歯」です。放射線治療が
終わって何年か経過すれば、照射野の歯も安全に抜
歯できるだろう、と思われがちなのですが、実際は
放射線治療後何年たっても、放射線性骨壊死の危険
性はほとんど変わらない、といわれています。治療
終了後も定期的に歯科で口腔内のチェックやケアを
受け、抜歯とならないよう歯を守り続けることが大
事です。
4. 骨修飾薬(骨粗鬆症などに使用
される骨を強くする薬)による
顎骨壊死
骨転移があるがん患者さんに対する治療の一つに、
転移した部分の骨折などを予防し、痛みを和らげる
ために、ビスフォスフォネート製剤や抗ランクル抗
体といった、骨を強くする薬剤(骨修飾薬)を使用
することがあります。この骨修飾薬を長期に渡って
使用した際の副作用で、顎骨壊死(顎の骨が腐る)
という重篤な副作用が報告されています(図5)。
顎骨壊死の副作用の発症頻度は1~2%程度と報
告されており、決して高くはないのですが、もし起
こってしまうと患者さんの生活の質を著しく下げて
しまうこと、治療抵抗性で対応に難渋することが多
いため、予防的な対応がとても重要です。
顎骨壊死の発症機序は未だ明らかではありません
が、特に口腔内の衛生状態が悪いことが顎骨壊死発
症の強いリスクであること、発症のきっかけで最も
多いのが、薬剤投与開始後の抜歯であることが知ら
れており、骨修飾薬の投与開始前の口腔ケア介入が、
骨壊死発症頻度を有意に低下させることが報告され
図4 放射線性う蝕
放射線治療の影響で、むし歯が非常にできやすくなりま
す。この影響は半永久的に続くと言われています。
図5 骨修飾薬
(ビスフォスフォネート製剤)
による顎骨
壊死
肺がん骨転移の患者さん。骨修飾薬の副作用により、
下顎骨の一部が壊死を起こし、腐骨が露出しています。