8020 No.13 2014-1
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トピックス
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ています。現在では骨修飾薬の投与前には必ず歯科
を受診し、問題のある歯はあらかじめ抜歯をしてお
き、また口腔を清潔に保つための衛生指導を受けて
おくこと、また投与中も口腔内の衛生状態に気を配
り、定期的な歯科チェック、ケアを行うこと、薬剤
使用後は抜歯を行わないことが、諸外国、本邦のが
ん診療のガイドラインに明記されています。
5. がんの外科手術と口腔ケア
最近では外科手術を受ける患者に対する口腔ケア
の有用性も注目されています(表3)。がんに限らず、
全身麻酔下での手術を受ける患者さんは、人工呼吸
器のチューブが口から喉を通して気管の中に挿入さ
れます(気管内挿管)。この際、気管に入った口腔内
の細菌が術後の呼吸器感染(肺炎)のリスクとなり
ます。手術を受ける前にあらかじめ口腔ケアを行う
ことで術後の肺炎を予防する意義が注目されていま
す。
また頭頸部がん、食道がんなどにおいては、術前
に口腔内の不衛生を改善することによって、周術期
合併症の頻度を低下させるという、がん治療成果そ
のものへの貢献も証明されつつあります。このよう
ながんは、口腔が不潔な状態で手術を行うと、術後
の創部感染や呼吸器感染(誤嚥性肺炎)のリスクが
高くなることが懸念されます。手術を行う前に口腔
ケアを行うことで、その術後の合併症リスクが軽減
することが報告されており、全国さまざまな施設で
手術前の口腔ケアを行う取り組みが行われています。
6. がん治療に口腔ケアを
取り入れる
がん治療に付随して起こる口腔内合併症に対する
対応は、がん治療開始後に、つまりトラブルが起き
てから対応するのでは間に合いません。がん治療を
始めるにあたって、前もって口腔内の環境をととの
え準備することで、トラブルの予防、または軽減が
可能なのです。
国立がん研究センターや静岡がんセンターでは、
がん治療にあらかじめ口腔ケアを組み込んだ医療を
実践しています(表4)。お口の合併症が起きるリス
クが高い治療を予定されている患者さんは、がん治
療が始まる前に歯科を受診し、あらかじめ口腔内を
良好に整える管理を行ってからがん治療を行うので
す。
歯科では、がん治療のスケジュールに合わせて、
治療中にトラブルを起こしそうなう蝕や歯周病、根
尖病巣のスクリーニング、プラークや歯石など細菌
性の汚染物の清掃除去、ブラッシング指導などを行
います。歯の治療が必要な場合は、なるべくがん治
療がはじまる前に応急処置を終えてしまいます。治
療中も、必要に応じてブラッシング指導や、口腔ケ
表3 がん外科手術における口腔ケアの目的
安全に外科手術を受けるための歯科介入のエビデンスが構
築されつつあります。
表4 がん治療に口腔ケアを取り入れる
がん治療開始前からの予防的な歯科介入が重要です。
周術期(外科手術前)の口腔ケアの意義
①術後の誤嚥性肺炎のリスク軽減
②気管内挿管時のリスク軽減
(歯芽の破折、脱落など)
③術後の経口摂取再開の支援
④口腔咽頭、食道手術における
術後合併症(呼吸器合併症、SSI)の
リスク軽減の可能性
がん治療に口腔ケアを取り入れる
口腔粘膜炎や、強い骨髄抑制を起こす恐れのあ
る化学療法、造血幹細胞移植
頭頸部領域の放射線治療
頭頸部がん、食道がん手術
骨修飾薬を使用する患者
症状緩和、感染回避
治療完遂をサポート
医療経済的効果
QOLの向上
がん治療の開始前に
口腔内評価と口腔清掃、
感染巣除去治療法に応じた
口腔衛生指導