8020  No.13  2014-1

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●障害者歯科

1.はじめに

近年では、全国各地域で障害者歯科治療を行う口

腔保健センターが設立され、大学病院の診療科には

障害者歯科を専門に行う診療科が置かれるなど、障

害者歯科をとりまく環境は整いつつあります。この

ような流れができてきたのは、ここ30年ほどのこ

とで、障害者歯科(スペシャルニーズデンティスト

リー)の標準的な考え方や教育はようやく整備され

てきたといえます。

今回は、障害者歯科(スペシャルニーズデンティ

ストリー)の現状と課題を考えていきたいと思いま

す。

2.障害者歯科

(スペシャルニーズ

  デンティストリー)

「障害」という表現について、漢字表記で「害」を

用いることには、さまざまな考えや受け止め方があ

ります。本来「障害」は「障礙」と表記されていま

した。「妨げる」という意味の「礙」が略字の「碍」

になり、戦後の常用漢字制限で音が共通の「害」と

表記されるに至った経緯があります。読み方は同じ

でも「妨げ」と「害」では、受ける印象が異なります。

そのため「障害」を本来の字である「障碍」に戻す、

あるいは「障がい」とかなで表記しようという意見

がありますが、統一はされていません。現在のところ、

専門学会の名称も「日本障害者歯科学会」ですので、

今回は「障害」と表現させていただきます。

障害者歯科の基本はノーマライゼーションであり、

「障害者を排除するのではなく、障害を持っていても

健常者と均等に当たり前に生活できるような社会こ

そがノーマルな社会である」という考え方です。し

かしながら個々の障害の状態、おかれている社会環

東京歯科大学
口腔健康臨床科学講座 准教授
水道橋病院障害者歯科・小児歯科科長

大多和由美

(スペシャルニーズ

デンティストリー)

おおたわ・ゆみ
東京歯科大学口腔健康臨床科学講座准教授、東京歯科大学
水道橋病院障害者歯科・小児歯科科長、歯学博士。日本障
害者歯科学会認定医・指導医、日本小児歯科学会専門医・
指導医。東京歯科大学卒業、1983年東京歯科大学小児
歯科学講座助手、97年同・講師、05年同大学口腔健康
臨床科学講座准教授。東京都出身。著書:スペシャルニー
ズデンティストリー 障害者歯科(共著)、口から診える症
候群・病気(共著)

PROFILE

●障害者歯科

日本障害者歯科学会では「障害者歯科の使命は、スペシャルニー

ズのある人を対象として行われる包括的な生活支援において、歯と
口腔機能の面で専門的立場から、また超職種的にも関与していくこ
とである」ことを基本理念としています。では、スペシャルニーズ
とは何でしょうか? 障害者歯科の現状と課題を考えます。