#05 歯を失ってよく噛めないでいると、心臓血管疾患や脳血管疾患、認知症のリスクが高まるので、むし歯や歯周病の予防が大切

再生時間:3:26 アップロード日:2017年01月19日

語り

それ以外に、わたしたちが一番病気にかかる、あるいは病気が原因で亡くなると、あるいは、病気が原因で要介護状態になるというようなことがあるわけですけど。日本人では、がんが死因第1位ですし、循環器病、いわゆる心臓血管疾患と脳血管疾患、あるいは肺炎、が、死因の上位4位になっているわけですけれど。このような個々の死因と歯や口の健康状態の関係も分かるようになってきています。

例えば、歯を失っていてよくかめない状態になっている人は、心臓血管疾患が原因で亡くなる確率が1.8倍ぐらいだというようなコホートデータが出てきたり。これは日本人のデータですけれど、台湾のデータでも、やはりコホートデータで、定期的に歯石を除去して口の中をきれいに保っている人は、心臓血管イベント(事象)ですから、心筋梗塞等がおこる確率が20%減るというようなことが分かってきています。

このようなことは、主な死因との関係ですけれど、これ以外にも、要介護状態になるかならないか。あるいは、要介護状態になる一番の原因は、脳血管疾患となりますし、あるいは、寝たきりの原因になるような転倒、骨折、あるいは認知症との関係がありますので、転びやすいかどうかというようなことも分かってきていて、歯の数が少なくて、かみあわせがない人を、コホートで追いかけて、65歳の人を4年ぐらい追いかけてみると、転びやすさが2.5倍というようなことが分かっています。

あるいは、認知症についても、コホートデータで分かるようになっていて、歯の数が少なくてよくかめない状態、入れ歯を入れない状態でいると、認知症になる確率が1.9倍まで高くなるというふうに言われています。

このように歯や口の関係と全身の関係というのは、コホートデータで分かるようになってきたということですので、これは原因と結果というメカニズムは別にして、歯や口の状態がよくなれば寿命も伸びる、あるいは、要介護状態の予防にもなるということで、健康寿命に直結すると言われるようになってきています。

その歯や口の健康状態がいいか悪いかによって、将来の全身の健康状態に影響するとすると、じゃ、歯の悪い人はどうなるんだということになって、もう、ホープレスかということになるんですけど、それは、今までの研究テータを見ると、歯を失ったからといって、諦める必要はなくて、入れ歯を入れたりインプラントを入れたりすることでかみ合わせを維持することで、ある一定の効果があることははっきりしています。

何より大事なことは、先ほど申し上げたように、歯の喪失というのは、むし歯や歯周病が原因ですので、このむし歯や歯周病はほかの疾患と違って予防ができるという病気です。ですから、最も大事なところで、小さいときからむし歯予防に取り組んだり、中高年になってから歯周病に取り組むことで、歯の喪失を確実に予防できるということです。