インタビュー13インタビュー時年齢:76歳(2017年2月28日)

#04 妻が急性腎不全で入院中に口から食べることができなくなった。経鼻栄養から胃ろうにすることを勧められたが、食べる楽しみがなくては生きていたってしょうがないと思った

再生時間:03:27 アップロード日:2017年12月04日

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インタビュー

腎不全つうんで、おしっこが、出が悪かったんだな。だから水分、水分、水分、水分って水ばっかり飲まして、あと、小水が出るような抑制剤みたいのを、まあ、言ったら、口からねえ、固形物を入れるっていうのを、いいのかなあと思ってたんだよ。栄養も全部点滴で済まして、それが何カ月も続いてるんで、食べらんなくなっちゃったのかなあ。

 だから、主である、そういう腎不全だとか病気は良くなったんだけど、今度は口から物を入れられなくなっちゃったね、自分で。あれ、つらいよねえ。あのー、これ、何つうんだ。難しい言葉でいうと…経管栄養とかな、鼻から胃袋へ管通して、日に3回だよねえ。2時間ぐらいかけて1瓶入れてくれてて。そこへ引っ掛けてさあ。ダカダカダカダカ垂らしてなあ。あんまり早すぎちゃいけねえって、途中に何かこう、調節弁みたいなのがあってさ。ほんとに点滴みたいにタランタラン垂れてて、見て、「速い速い、もっと、1時間で半分終わるぐらいにして」なんつってねえ。

あのー、(訪問歯科の)歯医者さんがねえ、ああ、そう。あのー、「カメラ飲まして、この喉のところ写した」って言うから、「家族の人、見てください」って。見たよ、俺。で、そのー、経管の鼻から入れたやつが喉の脇通ってんのも写ったよ。だけどもう、喉がね、おからみたいのがいっぱいこう、へばりついちゃってて、あのー、それが邪魔して飲み込めないんで、「(病院の医師に)ああ、これはもう、胃ろうだなって言われたよ」って言ったんだよ。だら、「病院ってそこで終わっちゃうんだよなあ。で、もう、自分らが面倒だから」、こういうこと(歯科医が)言ったよ。「自分らが面倒だから介護とか看病にな、さじ投げたってことなんだよ、胃ろうっていうのは」って言ってたよ。あ、確かにそうだな。胃ろうなら簡単だからな。あのー、(経鼻栄養の時のように毎回)管が胃まで入ってるか、あのー、注射器で空気入れて、聴診器で見なくたってさあ。時間がくりゃ、腹に穴が開いてんだからどんどん詰め込みゃいいわけでしょ。だから逃げちゃうわけだよ、そこでね。で、生きてりゃいいだろうってことなんだろ、あれ、多分。
 で、歯医者さんの言うのには、なかなかいいこと言うんだよ。「これはうまい」と。「これはいい刺身だ」とかあるじゃない。まあ、お彼岸になりゃ、「道明寺、このあんこはうまい」とかさあ。そういう、「何でも生きてりゃいいんで、もう、胃ろう」なんつうと喉通らないから味なんか分からねえっていうわけ。だから、そうだよなあ。食の楽しみって、いや、俺もろくな学校出てねえから頭悪いけどさあ。確かに食の楽しみってあるよなあ。物は器で食べさすとか、ただ流動食みたいなもん、ガンガンガンガン流し込まれたんじゃ、生きてたってしょうがねえよなあっていう感じだねえ。

プロフィール

インタビュー13
インタビュー時年齢:76歳
(2017年2月28日)

首都圏在住。結婚した息子がひとり。父親が製菓会社を営んでおり軍需工場にも卸していたので、戦時中も終戦直後も甘味には不自由しなかった。子どもの頃からむし歯が多く、40代で総入れ歯になったが、歯医者以外には罹ったことがないほど身体は丈夫。定年退職後10年間介護車両の運転手として働いた経験から、機械に頼って生かされることについて思うところがあり、妻(インタビュー14)の介護では胃ろうをせずに、口から食べられるようにすることを頑張ってきた。