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80歳高齢者の口腔健康状態の評価(各国の状況との比較) に関する文献レビュー

イントロダクション

1997~1998年度に全国4県(岩手、福岡、愛知、新潟)において厚生科学研究の一環として80歳高齢者約2,000名に対して行われたいわゆる「8020データバンクの構築についての調査」では、無歯顎者率が46.2%、20歯以上保有者率が10.2%であり、一人平均現在歯数が無歯顎者を含めた場合は6.0本、有歯顎者のみに絞った場合は11.2本と報告されている(文献No1)。

この数値が国際的にみて、良好なのか不良なのかといった議論は比較的多いが、断片的な情報と比較して論じている場合が多いように見受けられる。また、国内に紹介される外国の調査結果が誤って紹介されることも少なくない。例えば、わが国では通常、一人平均現在歯数は無歯顎者も含めて算出されるが、外国では有歯顎者のみの数値が用いられる例が多い。過去には、この有歯顎者のみによる一人平均現在歯数をもとに米国の高齢者の歯の状態は日本に比べて格段に良いという誤った報告が行われたことがある。

また国際比較の信頼性という点ではWHOが実施したICSⅡ調査(International Collaboration Study Ⅱ)(文献No2)が最も高いと考えられるが、調査された高齢者は65~74歳であり、80歳前後の年齢層については調査が行われていない。

以上のような背景から、海外における80歳前後の高齢者の現在歯数に関する疫学調査の文献を検索し、その状況をまとめて、国内の状況と比較した。

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方法

文献データベース( Medline)や主要論文で引用されていた文献を手がかりにして、高齢者の口腔に関して行われた疫学調査の文献を検索した。さらに、以下の条件で絞り込みを行った。

地域住民を対象として行われた調査であること
80歳前後(75歳以上)の年齢層の対象者数が50人以上であり、結果が明記されていること。
サンプリング方法が明記されていること。
口腔診査が行われていること。

調査した項目は、現在歯数に関する指標で、以下に示したとおりである。

無歯顎者率
20歯以上保有者率
一人平均現在歯数(有歯顎者のみ)
一人平均現在歯数(無歯顎者含む)

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結果

最終的に選ばれた文献は 5文献で、米国が2(文献No3,No4)、英国が1(文献No5)、北欧が2(スウェーデン1 [文献No6]、フィンランド1[文献No7])であった。これらはいずれも地域住民を母集団として行われたサンプリング調査であり、高齢者施設の在住者を対象とした調査は除外された。

表1に調査した結果を示す。

無歯顎者率は40%台を示した調査が多かった。

20歯以上保有者率については、調査された例が少なかった。

一人平均現在歯数は有歯顎者のみに絞った場合の数値は、概ね15本前後であった。無歯顎者も含めた数値は7~10本の範囲であった。

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考察

今回の報告では、文献収集を広く行ったわけではないので、漏れがあるものと考えられるが、それを差し引いたとしても、地域住民を母集団として行われた調査は世界的にも非常に少ないことが明らかになったと思われる。

日本人高齢者の歯の保有状況を世界各国の調査結果と比較すると、無歯顎者率(日本46.2%)では、それほど大きな違いは認められなかった。一人平均現在歯数は有歯顎者に絞った場合と無歯顎者を含めた場合のいずれについても、各国の結果よりも少なく、とくに有歯顎者のみに絞った場合で顕著であった。

したがって、日本人高齢者は、無歯顎者率は欧米先進諸国に比べて差がないものの、多数の現在歯を保有している割合が比較的少ないと考えられる。


文献:海外における80歳前後高齢者の現在歯数に関する疫学調査の文献

No 論文名
1 安藤雄一:高齢者の健康調査における口腔状態の評価,伝承から科学へⅡ 口腔保健と全身的な健康状態の関係について、冊子1;8020者のデータバンク構築、 12-43頁、口腔保健協会、東京、2000.
2 BarmesD.Lecleroq MH.:World Health Statics Quarterly-Rapport Trimestriel de Statistiques Saritaries Mordiales.47(2)83-94,1994.
3 Dougless CW,Jette AM,Fox CH,Tennsteclt SL,joshi A,Feldman  HA et al Oral health status of the elderly in New England Journal of Gerontology 1993;48:M39-46.
4 Marcus SE,Drury TF,Brown LJ,Zion GR Tooth retention and tooth loss in the permanent dentition of adults:United States,1988-1991. J Dent Res 1996;75 Spec:68495
5 Steele JG,Walls AW,Ayatollahi SM,Murray JJ. Major clinical findings from a dental survey of elderly people in three different English communities. British Dent J 1996;180:17-23
6 HugosonA,Koch G,Slotte C,Bergendal T,Thoistensson B,Thoistensson H.Caries prevalence and distribution in 20-80-year-olds in Jonkoping Sweden,in 1973,1983,and 1993. Community Dent Oral Epidemiol 2000;2890-6.
7 Nevalainen MJ,Narhi TO,SiukosaariP,Schmidt-Kaunisaho K,Ainamo A. Prosthetic rehabilitation in the elderly inhabit ants of Helsinki,Finland. Journal of Oral Rehabilitation.1996;23:722-8.
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